給湯室のOLレベルの話題

声を大にしては話せない。できれば墓場までもってきたい。

美しき囚われの日々、ぼくらこれで自由になったのだよね。

[[今週のお題「新生活」]]

意味のないことだとは十二分にわかっていた、でもそうせずにはいられなかった。

私は日本海に向かってありったけの声でわめいた。

少し笑ってSもつづいた。





ぼくらは声を張り上げてさけんだ。 全力で石を投げつけた。 流木で海をぶっ叩いた。 海に怒鳴り散らした。

どのくらいの時間やっていたんだろう

そして、たしかに、波の音にまざった。



空が白んできた。


何を得たのか、何が変わったのか、それはわからない。

でもきっと私も同じような顔をしていたのでしょうね、彼はそれなりに充実したような顔をしていて、そして彼の帰る場所に戻っていった。


そっとふり返る、

海は碧色で

波は楽しそうにからめる 赤ちゃんの指のようだった。




だいぶ前の話になるんだ、
久しぶりに地元で友人Sと昔の知り合い数人に会って、なりゆきでいわゆる場末の小さなスナックで飲んだ。

Sは愉快そうに私を含む皆とお喋りをしているのだけど、なんとなく違和感があった。
靴の中に少し砂が入り込んでいるような感覚、話せば話すほどに。さらにそれを隠そうと、またしても靴砂。

おそらくあの場で気づいていたのは私だけだったのかもしれない、とにかく微小ながらたしかにいつもと違ったのだ。

 でも本人が自分の意思で隠している以上、こちらから切り出すのも野暮だな、いやでも、、。と私にも伝染靴砂。


そんな時間が続いて、そしてお開きの時間となった。
Sはちょうどよく車で来ていたので(もちろんノンアルコールドリンクで済ませていた)痺れを切らした私は「ドライブしよう、海が見たいから!」そう提案した。

彼はやはりすぐに了承した。



かくして僕らは夜の海へと出発した。2時だった。


車ではSから切りだしてくれた。

隠していたのも頷けるような、そういった話だった。(うまく説明がつかないが、年になれば1つはある、話せば一時的に楽になるけども、解決のしようのないようなもの、と考えて欲しい)


もちろん答えなんて出ないままに、静かに海岸についた。

暗かった。

海は鈍色で、波はまるで鉛のようだった。

溶け出したそれが足をのみこもうとしてるみたいだった。もうずっと深くに引き摺りこまれそうだった。