給湯室のOLレベルの話題

声を大にしては話せない。できれば墓場までもってきたい。

レイトショーのかえりみち。

「ねぇ!ちゃんと聞いてる!?」

 私が18才だったころ、よくモリちゃん(仮名)と映画を見に行っていた。
埃っぽい風俗街を少し抜けたところにあるそのくたびれた映画館※は、当時の私達にとって良き娯楽施設だった。なにせレイトショーだと安いだけじゃなくほぼ貸切り状態だったからだ。

 映画の帰りは決まって近くにある「ALL100円!!」とデカデカと書かれた自販機でジュースを買い、(私はファンタオレンジ、モリちゃんはいつもコーラ。)
自転車をこぎながら、興奮ぎみに今日見た映画の感想を話す(時々裏返る)モリちゃんの声を聞きながら家路につくのだった。
 
 今現在の私はあまり、というか全然映画を見に行かない。なぜかと考えたところ、『モリちゃん感想発表タイム』が無いからだということに気がついた。私にとっては映像そのものよりも、それをモリちゃんの目を通してみたせかいの方がよっぽど愉快で心地よい時間だったんだ。

 「聞いてるよ、ちゃんときいてたよ。」


(※夏場に行くと朝からそれまで座っていたお客さんのおかげで座席がもれなく汗臭かった、なので私達は必ず持参したファブリーズをふりかけてから座った)




今週のお題「調味料」
調味料ではないのだけれども、ファンタオレンジの匂いは印象に残っています